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社会記事 男性の育児休暇利用率は0,5%「世界一の低水準」

◇2005年度の統計調査で育児休業取得率は女性が72.3%で、男性は0.5%だった。欧米諸国と比べると、日本の育児休業取得率で男性の取得率の低さは先進国の中では「世界一」の状態。昨今の離婚率の増加により、父子家庭や母子家庭が増えているにもかかわらず男性の育児休業は事実上、200人の男性に対して1人が取得しているような現状だ。このような状況を生み出している最大の要因は、日本独特の「女は家庭、男は仕事」という昔ながらの考え方と、企業で働く男性が育児休暇を取りにくい労働環境が挙げられる。もし仮に、男性社員が育児休暇を利用したとしても、大企業なら出世に影響し、中小企業なら取得自体が困難といった具合だ。

厚生労働省は、育児休暇の利用促進と、経済的な理由で出産をためらう人を後押しし少子化対策の強化を図るため、2007年度から育児休暇の助成額を引き上げることを10月17日発表した。内容は、育児休暇前の賃金の4割だった育児休暇中の雇用保険助成額を、最大7割に引き上げる内容の支援制度だ。また、雇用保険にある「育児休業基本給付金」という制度も改変する。現状は育休前の賃金の4割しか保障されていないが、企業が支給の上乗せを3ヶ月以上実施した場合に、大企業には上乗せ分の半分を、中小企業には3分の2を雇用保険から助成する。助成分は育休前賃金の3割が上限で、雇用保険が最大で実質7割を負担することになる。つまり育児休暇の取得自体が困難な中小企業に対して手厚い助成を施すということだ。これにより、大企業、中小企業を問わず、育児休暇がとりやすい制度環境が整うわけだ。

ただ、問題は残る。社員の出世への影響である。制度自体が改変されても、企業特有の経営方針や考え方が変わらなければ、育児休暇を取得した段階で出世レースから脱落してしまうというのが問題。日本独特の社会通念や社会構造が、新制度の障害になることは間違いが無い。女性が妊娠、出産したら退職しなければならないような考え方は企業内には確実にある。ましてや、男性が育児のために長期休暇をするものなら企業内で目立つため「白い目線」を浴びることとなる。男性も女性もキャリアに傷がつく、最悪の場合は終止符を打たれてしまうと言っても過言ではない。

子供は親があって育つという根本的なものを企業は考えなければならない。「親がいなくても託児所や祖父・祖母に預ければ大丈夫だ」という意見もあるが、生まれたばかりの子供は当然生まれた段階から、さまざまな影響を受けて育つわけだから、親の影響をあまり受けずに育つことは好ましいことではない。父親と母親が子育てで協力できる環境をつくるためには、女性のみならず男性が育児にしっかり参加することはあたりまえの話だ。あたりまえができていない日本独特の社会構造は変化しなければならない。男女共同参画という言葉があるが、本当の意味で男女共同参画の社会を実現するには、この制度で「男性が育児休暇を取得すること」である。「前例がない」とかの問題ではない。前例は例をつくってしまえば無くなるものだ。ひとりひとりが「育児休暇制度」を積極的に活用していけば、社会で認められ、あたりまえ化するのである。厚生労働省が積極的な制度を実施しようとしている今、これまで通りの消極的行動をしていては、社会は何も進歩しない。住みよい社会を造るために、世で仕事をするサラリーマンが、勇気を出して制度を活用することが求められていると言っても過言ではないだろう。


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2006年10月18日 アドネット編集部 池野晴樹 

 

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