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社会記事 岡崎ホームレス殺人事件が記す「社会の影」 |
◇11月23日に愛知県岡崎市の河川敷でホームレスの花岡美代子さん(69)が殺害された事件の捜査が続いている。この事件の被害者は殺害された花岡さんだけでなく、他にも周辺に住んでいたホームレス数名が現金を奪われるなどの被害を受けている。花岡さんはホームレスだが、月額7万円相当の年金を得ており、ホームレスの中では比較的安定した生活を過ごしていたという。
それにしても年金受給者がアパートなどの自宅に住めず、ホームレス生活を余儀なくされるのは明らかな社会制度の欠陥。この金額では1人で老後を生活することが不可能であることを、証明してしまったのである。この7万円という年金受給額は、女性が職に就いた経験がないまま40年間にわたり国民年金を納めていたとすると、普通にもらえる「満額年金の額」である。つまり、律儀に年金をコツコツ納めても最低限度の家のある生活が過ごせないのである。迫りくる少子高齢化社会で年金受給額はどんどん減っている。年金受給開始年齢もどんどん高齢化し、年金がもらえる「総額」は減る一方だ。
社会的弱者であるホームレスには総じて60歳以上の人が多い。中には40歳代、50歳代で仕事をしたくても仕事ができない人もいる。ホームレスの暮らし方は言葉の通り、その多くは公園や河川敷でのテント暮らし。空き缶を集めたり、家電製品を修理して販売したり、ごみ拾いなどをして、お金を得ている。都市部ではよくこうした姿が目撃される。ホームレスだからといって、全くお金をもっていない人は少ない。多少なりともお金は持っている。厚生労働省の調べでは、ホームレスは全国に約25000人いるという。一番多いのが大阪府、次いで東京都で愛知県には第三位で約2000人ものホームレスがいる。ホームレスは人が群がる都市部に多く農村部や地方都市には少ない。今回の襲撃事件が起きた岡崎市は人口40万人の中規模以上の都市。犯行グループは大都市の隙間であるホームレスが住む区域で犯行を繰り返したのである。
殺された花岡さんは、各メディアで報道されているとおり、ホームレス襲撃常習犯ともいえる少年犯行グループに襲われた可能性が極めて高い。愛知県警岡崎署の捜査本部の調べでは、花岡さんのテント小屋からは財布が見つかったが、現金は財布にも小屋の中にもなかったことが判明。捜査本部は現金が奪われた可能性が高いと見て捜査を行っている。また、単発的にホームレスを襲撃したのではないのは明らか。付近のホームレスに聞き取り調査をしたところ、襲撃未遂や恐喝紛いの類似事件が頻繁に多発している現状がある。なかには、全財産の300円を奪われたと証言するホームレスもおり事態は深刻だ。一刻も早い犯人逮捕はもちろんのこと、事件が起きた背後関係も徹底的に明らかにしなければならない。また、この事件で明らかになった「社会の影」に対しては国が責任をもって考えなければならない国民的なテーマであり、課題であることを忘れてはいけない。
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