◇裁判員制度のスタートがカウントダウンに入っているが、世間での認知度は今ひとつ。認知度のみならず、裁判員に選ばれた場合の職場の対応についても未だ検討段階で、社会的な対応はほとんどが決まっていないのが現状。そんな中、裁判員制度と類似した制度で60年近く前から施行されている制度がある。その名は検察審査員制度。検察審査員制度とは、選挙権を有する国民の中からくじで選ばれた11人(異なる人数の場合もある)が、国民を代表して検察官が容疑者を裁判にかけなかったことの善し悪しを審査することが主な任務で、審査員に選ばれた場合、原則として辞退することはできない強制力を伴った制度である。
選考を無視したり、審査会自体の参加を放棄すると罰金を払わなくてはならない。検察審査会開会は主に平日の昼間に開催されるので一般の社会人にとっては「出席をするか罰金を払うか」を選択しなければならない。いくら検察審査員の審査に出席することが公民権の行使にあたるとは言え迷惑な話だ。労働基準法第7条で規定されるように、事業主は雇用者が検察審査員に選抜された場合、その参加を拒むことはできないとあるが、現状は有給消化等で無理無理参加している人が大多数といった状況だ。大事な会議や出張がある場合には、罰金を払って欠席している人もいると聞く。公民権行使が大前提なら選挙権があって選挙に行かない人はどうなるのか。選挙に行く行かないは本人が決める「権利行使の問題」であるから、検察審査員についても選ばれた側の本人に選択権を与えるのが、現代社会的には妥当ではないだろうか。 サラリーマンの話はここまでとして、今回この記事を書くきっかけになったひとつのケースについて考えてみよう。三重県在住の出産間際の主婦Aさんに「検察審査員候補に選ばれました」通知が送られた。Aさんは当然「出産するからいけません」と連絡するも結果的には検察審査員として選考されてしまったのである。選考後の辞退は原則不可。しかも出産間際の時期に検察審査会が開かれるという。無理な話だ。現実問題として産後の女性の体調のこともあるし、生後すぐの段階で育児を頼める託児所はほとんどない。検察審査会に乳幼児をつれていくこともできない。親に乳幼児を託すにしても身近な場所に親がいない場合には、到底、無理な話。自己の生活や家庭、そして乳幼児を犠牲にしてまで検察審査員は務めなければならないものなのか?乳幼児には当然人権がある。今のままの制度だと、乳幼児の人権を一時的にしろ国が奪うといっても言い過ぎではない。親がいなければ乳幼児は育たない。この制度と類似した裁判員制度が今にも施行されようとしているわけだから、妊娠中の人や乳幼児保育中の親にとってみれば、問題は深刻だ。 |
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・裁判員制度(裁判員制度についての解説)
2006年11月12日 アドネットニュース編集部
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