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社会記事 裁判員制度は大丈夫?「検察審査員」制度の不備

◇裁判員制度のスタートがカウントダウンに入っているが、世間での認知度は今ひとつ。認知度のみならず、裁判員に選ばれた場合の職場の対応についても未だ検討段階で、社会的な対応はほとんどが決まっていないのが現状。そんな中、裁判員制度と類似した制度で60年近く前から施行されている制度がある。その名は検察審査員制度。検察審査員制度とは、選挙権を有する国民の中からくじで選ばれた11人(異なる人数の場合もある)が、国民を代表して検察官が容疑者を裁判にかけなかったことの善し悪しを審査することが主な任務で、審査員に選ばれた場合、原則として辞退することはできない強制力を伴った制度である。

検察審査員の在する検察審査会は、全国の地方裁判所と主な地方裁判所支部の所在地(全国201箇所)で設けられている。くじで審査員は選ばれるので、突然「裁判所から検察審査員にあなたが選ばれますよ」と手紙で通知される可能性は誰にもある。一部法律関係の仕事をしている人などは選考対象外だが60歳未満の大人なら選ばれない可能性はないのである。もし、選ばれた場合は先記の通り原則辞退はできない。辞退できるのは、@年齢が満60歳以上であることA国会・地方議会の議員(ただし議会開会中に限る)B国会職員・官吏・公吏・教員C学生・生徒D重い病気や海外滞在などのやむを得ない理由により、検察審査会から職務を辞することを認められた人の、何れかに該当した人のみである。つまり普通のサラリーマンや主婦には辞退する権利すらないのである。

選考を無視したり、審査会自体の参加を放棄すると罰金を払わなくてはならない。検察審査会開会は主に平日の昼間に開催されるので一般の社会人にとっては「出席をするか罰金を払うか」を選択しなければならない。いくら検察審査員の審査に出席することが公民権の行使にあたるとは言え迷惑な話だ。労働基準法第7条で規定されるように、事業主は雇用者が検察審査員に選抜された場合、その参加を拒むことはできないとあるが、現状は有給消化等で無理無理参加している人が大多数といった状況だ。大事な会議や出張がある場合には、罰金を払って欠席している人もいると聞く。公民権行使が大前提なら選挙権があって選挙に行かない人はどうなるのか。選挙に行く行かないは本人が決める「権利行使の問題」であるから、検察審査員についても選ばれた側の本人に選択権を与えるのが、現代社会的には妥当ではないだろうか。

サラリーマンの話はここまでとして、今回この記事を書くきっかけになったひとつのケースについて考えてみよう。三重県在住の出産間際の主婦Aさんに「検察審査員候補に選ばれました」通知が送られた。Aさんは当然「出産するからいけません」と連絡するも結果的には検察審査員として選考されてしまったのである。選考後の辞退は原則不可。しかも出産間際の時期に検察審査会が開かれるという。無理な話だ。現実問題として産後の女性の体調のこともあるし、生後すぐの段階で育児を頼める託児所はほとんどない。検察審査会に乳幼児をつれていくこともできない。親に乳幼児を託すにしても身近な場所に親がいない場合には、到底、無理な話。自己の生活や家庭、そして乳幼児を犠牲にしてまで検察審査員は務めなければならないものなのか?乳幼児には当然人権がある。今のままの制度だと、乳幼児の人権を一時的にしろ国が奪うといっても言い過ぎではない。親がいなければ乳幼児は育たない。この制度と類似した裁判員制度が今にも施行されようとしているわけだから、妊娠中の人や乳幼児保育中の親にとってみれば、問題は深刻だ。


いずれにしろ、今回のケースは、候補者段階で理由をしっかり伝えているのに選んでしまったのは「選ぶ側」の常識欠如と明らかな不手際。選ばれたAさんは最終的には検察審査員を辞退した。辞退したというよりは、クレームにより選ぶ側が非を認め任用を取り消したのである。認めた非は、言い訳がましいもので「同姓同名の人がいて間違えて選んでしまいました」とのことだが、普通には考えられない。
裁判員制度は検察審査員制度と類似しているため、今回のようなケースがおきることが予想される。一方は古い制度だが一方は新しい制度。制度そのものの社会的認知度をあげることは結構なことだが、現代社会の実情にあった制度でなければトラブルが生まれることは確実だ。少子化が進行する現代社会。現在の検察審査員制度と裁判員制度で、辞退できる人として「妊娠中、もしくは妊娠予定のある女性、育児中(幼稚園入園未満の子を持つ家庭)の男女又は保護者」の一文を加えることが望まれる。

裁判員制度(裁判員制度についての解説)
検察審査会制度(検察審査員と検察審査会についての解説)
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2006年11月12日 アドネットニュース編集部